夕食はホテルのレストランに向かうため、部屋から出てきた彼に眉をひそめた。

「……他に服、無いんですか?」

 いつもと変わりない彼の服装にブーたれた。

 折角の旅行なのに……

「何が不満だ」

 その口調には当惑したような感情が読み取れる。

 彼のそんな表情に少しうれしさを感じたが、やはり彼女にとっては大切な時間でもあった。

 服装自体に不満はありませんよ……いつ見ても格好いいし似合ってるけどね。

 と思いつつエレベータに滑り込む。


「そだ! 思い切って服も買いましょ!」

「! おい?」

 彼の手を取り夜の街に駆け出した。