両親の欄も空欄、生い立ち、故郷も白紙……か。
何か言えない理由があるのかもしれないし…
無理に問い詰めるのも可哀想だし……
でも話はしてみたいかも…。
――楓の間。
ここは市之助や、以前空が生活をしていた部屋。
いわゆる使用人の皆が生活する部屋だ。
市之助いるかな…
ちょっと聞きたいことあるし…
「失礼するわねー市之助いるかしら?」
「あ、姫様!!こんにちわ」
市之助が裁縫をやめてこっちに来た。中には市之助しかいないみたいだ
「ごめんなさい、仕事中だった?」
「いえ、今は休憩時間なんです。皆、昼を食べに行ってるんですよ。僕はちょっと残ってやりたいことがあったので…」
「そうなの、ちょうど良かったわ!!聞きたいことがあってね。いいかしら」
「はい、何でございましょう?」
市之助は笑顔を向けてきた。
「えっとね、ちょっと瀬川慎くんのことで聞きたいことがあってね……」
「…慎のことですか。それで?」
「彼って剣士仲間の皆には…どう思われているの?」
私は唐突に言ってみた。
市之助の表情が曇ったように感じたのは気のせいだろうか?
「……あいつは…何て言うかな…なんか…すごく冷たい奴なんです。」
「冷たい?」
「はい。話し掛けても素っ気ないし暗いから他の奴等もあまり良くは思ってないと思いますよ」

