僕らが病院に着く頃には
冬の短い日はとうに暮れていた
僕達は三階のナースステーションで
彼の状況を聞いた
彼の主治医が呼び出され
簡潔な説明が兄になされた
今回の出血は食道静脈瘤破裂
先程止血処置を行ったが
出血が多く意識は混濁している
今夜が山だと
彼の出血は今までで一番多く
1リットルに近い血液を失った
今彼はICUに居て
輸血と点滴を受けている
少しづつ意識が戻りかけているから
家族は面会しなさい
とのことだった
彼はいま生死の境をさ迷っている
僕に「また来い」って言ったのに
僕は彼と話をしなければ
ならなかったのに
「面会に行くよ」
兄は僕にそう言い
担当のナースに面会を依頼した
僕たちはICUに案内された
身体を滅菌され
面会用の白衣と帽子を着けて
僕たちは病室へ入った
彼は血圧計や点滴のチューブの中に
埋もれていた