嘘だって、言ってよ。




「春姫!?」


「怪我は…!」




2人の声でハッとして、あたしは自分の足元に視線を落とした。


……割れた、食器。


まるであたし自身の想いが砕けてしまったような錯覚を覚え、咄嗟に目を逸らした。




「ご、ごめんなさいっ…!」




慌ててしゃがみこみ、食器の破片を拾おうと手を伸ばした。


陶器なのかよくわからない純白の破片を、次々と拾い集める。




「痛っ…!」




気を付けていたのに、最後の一欠片に触れた瞬間痛みが走った。


人差し指の腹に、赤い玉がぷつりと浮かんできた。




「(…なにしてるの、あたし…)」


「赤城様!お怪我はございませんか!?」




駆け寄って来た執事さんたちに向かってこくりと頷き、あたしはそっと立ち上がった。


くらりと一瞬身体が揺れ、そのまま華苗の胸に飛び込んでしまった。




「春姫…?大丈夫、ですか…?」




ひどく狼狽えた声から、華苗も婚約騒動に驚いているんだとわかった。


隣では繭が、眉間に皺を寄せて難しい顔をしていた。




「……どうしてこんなことに…?」




その言葉の意味を問う前に、再びスピーカーから声が流れてきた。