お店の名前は“ポー・マ・グラネート”


蔦の巻いたレンガ造りの可愛い外装で、それこそ外国にありそうだと思った。


ケーキ屋さんなのに、全席個室って…!


しかも要予約ときたもんだ。


…蕪城先生って、やることなすことカッコいい…。


そして、冒頭に戻る。




「約束のクリスマスケーキ、な。良い店だろ?」




冷えた身体を暖めようと紅茶をちびちび飲んでいると、蕪城先生と目が合った。


気恥ずかしくなり、あたしは慌てて話題を変えた。




『か、株なんて……よく思い付きましたよね!』


「あァ……最初に言い出したのは艷倉と炎王寺だ」


『え!?そうなんですか!?』




2人はそんなこと、一言も言ってなかったのに…。


申し訳ないのとありがたい気持ちでいっぱいになって、あたしはきゅっと唇を噛んだ。


……色んな人の助けがあって、あたしはここにいるんだね。


本当は華苗と繭も一緒にケーキを食べようと思い誘ったのに、断られてしまった。


その理由がまた…




“え、クリスマスケーキを一緒に?ありがたいお話ですが…”


“後ろに怖ーい紳士がいらっしゃるので、私たちはおいとましますわ”




『(そういえば怖い紳士って、誰のことだったんだろ…?)』


「ま、あんなに上手くいくとは思ってなかったけどな」




蕪城先生はコーヒーに角砂糖をぽちゃんっと落とし、スプーンでカチャカチャとかき混ぜた。


……甘党のくせに、タバコ吸うなんて。