「…………ん?」




あたしの視線に気付いた蕪城先生が、コーヒーをそっと戻した。


カチャッ


ソーサーに触れた音すら、今のあたしには心地良く聞こえてしまう。




「そんなに見つめてどうしたんだ?……見惚れる、の間違いか」


『み、見惚れてなんかないです!!』




あたしは赤くなった顔を隠すように、慌てて紅茶を口に運んだ。






……パーティーが終わったあと、蕪城先生がふらりといなくなった。


どこへ消えたのかと思って捜していたら、かっちりとスーツを着こなした蕪城先生が奥の部屋から出てきた。


多分、その部屋で胡桃坂さんのお父さんと話し合っていたんだろう。


あまりのカッコよさにぼんやりしているあたしに、蕪城先生はポンッとヘルメットを渡した。




『え?なんですか、これ』


「良いから被っとけ」




なんて言われるがままに被ったら、目の前にはバイクが。


それも原付とかいうやつじゃない、すっごく大きなバイクだった。




『か、かかか蕪城先生が乗るんですか!?』


「変か?」


『い、いえ!寧ろ似合いすぎてやばいくらいです…』


「愛車のハーレーなんだよ。ほら、後ろ乗れ」


『へ?後ろ?』


「……物分かりが悪いな、お前」




ヒョイッ




『いゃああああ!』


「…んな嫌がることねぇだろ、おい。抱えただけじゃねぇか。…んじゃ、しっかり掴まれよ」


『え、いや、えっ、えっ、………ひぃいいいいいっ!!!』




物凄いスピードで走ったかと思ったら、気付いた時にはケーキ屋さんの前にいた。