私が腰をおろして数分たった頃だった。
パシャ・・
パシャっ・・・・
水溜まりを走る音が私の耳に響き渡った。
近付いてる?
耳にはいりこむ音。
一瞬、期待してしまった。
でも顔をあげなかった。
いや、あげたくなかった。
また、さっきみたいに期待が外れて泣いちゃいそうだから。
この足音をならしている人物を見たくない。
そうして自分の両腿に顔をさっきより強く埋めた。
そうした次の瞬間、誰かの声が耳にはいった。
「樹菜ちゃん・・・!」
一瞬、自分は馬鹿なんじゃないかって思った。
私が望んでた声。
そういう声が耳にはいりこんだから。
自分はどれだけこの声が聞きたいんだって、馬鹿だって思った。
この声を聞いたら、自然に顔をあげてしまう。
私の目に飛び込む人物。
やっぱり、私の耳は間違ってなかった。
私の目には、将さんが映り込んでる。
傘さしてない・・・
将さん。
次の瞬間―――いきなり将さんは私の手首を掴んだ。
びっくりして立ち上がった。


