「キース騎士団長、いらしたんですか?あの方の側にいらっしゃらなくても良いのですか?」



鍛錬所に入るとカイナンが近づいてきた。



手には長い槍を持っている。



彼はこれを得意とする騎士だ。



「……お前まで……はぁ~」



ベンチに腰をかけたキースはため息を漏らした。



「え?どうしたんですか?」



このような様子のキース騎士団長は久しぶりに見る。



前回見たのはサラ様がいなくなった時だ。もちろんあの時は陛下も元気がなかった。



陛下を守ると先に立ち直ったのはキース騎士団長だった。



今の様子はあれほど酷くはないけれど、悩み事がたくさんあるって顔だ。



「あ~ いいんだ あの娘のことなど放っておけばいいんだ」



ぶつぶつとカイナンにではなく独り言のように呟き立ち上がった。



「?」



「しごいてやるよ」



今まで悩んだ様子だったのに次の瞬間、雰囲気はがらりと変わった。



「は、はい お願いします」



カイナンは深々と頭を下げた。