明良兄は乃亜のお兄さん。あたしのお兄役でもある。


昔はよく一緒に遊んだな。


大きくなって明良兄はかっこ良くなって、女の人とたくさんお付き合いしてて、あたしなんてかまってくれないと思ってたけど、昔と同じように可愛がってくれる。




「ホントは一緒に帰りたかったんだけどさ。お前が学校では他人の振りしろって言うから」


明良兄は口を尖らせた。


「だって、神代に変に勘ぐられたこっちが困るじゃん。あたしと明良兄に接点があったらだめなんだよ」


あたしは濡れた制服のブレザーを脱ぎながら答えた。


ついでにブラウスも脱ぐ。




「そう言うけど、神代に近づけてるのか……」と言いかけたところで明良兄は顔を赤くして慌てて逸らした。


「おまっ……こんなところで脱ぐな」


「え~、いいじゃん。べたべたで気持ち悪いもん。それにキャミ着てるから大丈夫」


「そういう問題じゃない!」と言って明良兄が更に顔を逸らす。


その横顔がちょっと怒ってるようにも見えた。




「じゃあどういう問題?」


あたしは明良兄の横に座って、彼の膝に手をついた。


「どうって……」明良兄は怒った表情から一転、今度は困ったように眉を寄せる。




「お前……そうやって神代に迫ってるのか?」


明良兄がまたもちょっと怒ったように眉を吊り上げた。




そうやって……?


あたしは自分の格好を見下ろす。


レースをあしらった黒いキャミソールに、制服の短いスカート姿だった。