あたしが死のうとしたとき……
崖であたしの手を掴んだまま、彼は命がけで言ってくれた。
“死ぬ時は一緒だかんな”
生きる意味を見失っていたあたしに。
“でも、いまは……ふたりで一緒に生きるんだよ”
あたしはひとりじゃない。
そう言ってくれた彼の言葉が、
あれからずっと、心の中で
忘れられなかった。
大切な人を失うことが怖くて、大切な人を自分から遠ざけていた。
大切なものを作らなければ、何も失わずに済む。
大切な人を失うくらいなら、あたしはひとりでかまわない。
ずっとそう思ってきた。
この世界に
永遠なものなんてない
そう思ってた。
それでもあたしはあの日、
“死ぬ時は一緒だかんな”
彼の言葉の中に
永遠を感じたの――。



![春、さくら、君を想うナミダ。[完]](https://www.no-ichigo.jp/img/issuedProduct/10560-750.jpg?t=1495684634)