「あ……」



そして俺の隣の席になったのは、3年になって同じクラスになった吉野更紗。



「ふふっ。橘くんの隣だーっ。よろしくねーっ」



「おう、よろしくな」



吉野はニコッと笑ったあと、席に座った。



俺も席に座ろうとすると、くぼっちが俺の服を掴んだ。



「なぁ~橘、俺と席変わろうぜ~?俺、更紗ちゃんの隣がいい~」



「え?あぁ、別にいいけど」



すると、吉野がくぼっちの顔を見る。



「ちょっと、くぼっち?ズルはダメよ?」



「えー?バレたー?てへへっ」



くぼっちは舌をペロッと出して、窓際のいちばん後ろの席に座る。



俺は後ろを向き、呆れた表情でくぼっちのことを見る。



「なに?橘」



「くぼっちさ、そんなことばっかり言ってると、また彼女に怒られるよ?」



「ぬわー!この席でいいです!はい。冗談だよ、冗談~。いちばん後ろの席、最高ー!」



くぼっちは、このまえ彼女とデート中にケンカしたらしい。



彼女といるのに、通りすがりの可愛い女の子を目で追いかけてたとかで、彼女が怒りだして、ケンカ。



でもケンカしてもすぐに仲直りしてるし、くぼっちが彼女のことを大好きなのも俺は知ってる。



くぼっちいわく、可愛い子を目で追いかけてしまうのは、無意識のうちだったりで、男の本能らしい。