「私をお母さんだと思っていいからね」



なんでそんなこと言うの……?



あたしのお母さんは……ひとりしかいない。



あたしが黙ったままいると、女性の笑顔は一瞬で消えた。



目を細めて、冷たい瞳であたしを見ていた。



もしかして……この人がそうなの……?



お母さんを苦しめたのは、この人なの……?



「寒いでしょ?早く中に入って」



父親はこの女の人と不倫して、お母さんと幼いあたしを捨てたの?



父親のことだって、いまだに許せたわけじゃないのに。



この女の人と、子供がいるこの家で。



あたしは今日から暮らしてくの……?



「どうしたの?凜ちゃん」



「……なんでもありません」



「そう、入って」



こんな生活が待ってるなんて、思いもしなかった。