「ウィズ、一体何があったんだい」

部屋に入り、彼をソファへとおろす。そしてクロードもまた、向かいのソファへと腰をおろした。

「……街の中に、入ってしまったんだ」

人々が寝静まった真夜中に街中を歩くことは度々ある。
けれどそれ以外は、人間に出会わないように、極力避けていた。


「貴族は相変わらず穢れたままだったよ」

その言葉に、クロードは顔をしかめる。


「けれど庶民たちは、違った」

( 許しておくれ、魔法使い )

自分たちが悪いのだと心を痛めて、謝って来た。

「彼らが心から望む願いを、叶えてあげたいと思ったんだ。けれど……過去と同じように、〝魔法使い〟に依存させてしまうかもしれない。再び、人々の心を穢してしまうかもしれない。……僕は、それが怖くて仕方がない」


どうして僕は、存在してしまったのだろう。

人々を幸せにするはずが、穢してしまい、僕という存在に依存させてしまった。

「ウィズ、何も焦る必要はないさ」

クロードの言葉に、彼は顔を上げる。