*************


あたしが顔を洗っていた時、不意に何かの気配を感じた。


感覚で判る。


もう何度もそれに触れてきた。


煌とも直に感じた――

櫂の……闇の力。



漆黒色に微光するそれは、あたしの身体を撫でるように螺旋状に纏わり付き、


「な!!!?」


一気に力を込めて締め上げた。


まるで黒い大蛇に全身を巻き付かれたかのように。


肉が、骨が……砕かれそうな衝撃にギシギシと悲鳴を上げる。


声すら、苦しくて出てこない。


絞られたように、脂汗だけが滴り落ちるのが判った。


その時、闇の力が僅かに枝分かれをして。


それはまるで蛇の舌のようにちろちろと、


そして一気に差し込むようにあたしの身体に侵入した。



あたしの――心臓目掛けて。


あたしの心臓が……


陽斗が……


直に舐め上げられるような不快すぎる感触。


更に内部まで忍び入る感覚。



心臓の裏側に、櫂の闇の力が充満していく。



そしてそれは――


「……やだッ!!!」



膨張した。


中から破裂しそうな感覚に、あたしは引き攣った呼吸しか出来なくて。