「僕・・・何だか急に寂しくなってきた。」
「死ぬ事がか?」
「うん。・・・ユウは好きだ。相手も好きって思っててくれて嬉しいけど・・・それなりに、無くすものが増えたね。」
「幸せは・・・ある意味失うものだからな。」
ツツジは少しの間だけ黙っていたが、数十秒してから顔を上げた。
「ユウと会えなくなるのは・・・寂しい。前に死んだっていうお母さん・・・凄く優しくって、死んだって分かった時、今と同じ気持ちだった。」
これを聞いて私は、ツツジの記憶が半分戻っている事に気づく。
「あのあと、誰も僕に優しくしてくれなくって、それも悲しかった。だからかな・・・?」
そう言ったツツジの目じりから、次々と涙が溢れ出た。
「その分ユウといた時間が幸せで・・・嬉しい。」
一筋の涙ではなく、大粒の涙がいくつも流れ落ちている。
日の光に照らされ、涙が水晶のように輝いていた。
「もう悔いは無いけど・・・死ぬ前にユウに会えたら・・・いいな。」
その言葉を、私はずっとその場で聞いていた。
・・・・・・・・・・・
せめて最後の願いだけでも叶えてやりたい。
決心するかのように私は拳を握った。
優の願いは叶えられないが、最後に思い出を残す事はできる。


