「あなたの作品も、見てみたいです。」
口説くつもりではなく、彼の事だから純粋な気持ちで言ったのだろう。
学は笑うと女性と並ぶのではないかと言うくらい綺麗だった。
頬に所々絵の具が付いているが、気にする様子も無い。
そういうと、学は美咲に背を向けた。
私は本能なのかとっさに美咲に念を送った。
「ここ、どうやって描くの?」
照れ屋なのか出ていなかった感情を引き出させ、言葉に出させる。
「ああ、ここは弧を描くようにして・・・」
教えられている中、美咲は赤い顔で聞いている。
普段とは全く違う。演技にも見えない様子だった。
もしかしたら、彼女のあの悪い性格の方は不満の現われなのかもしれない。
生徒と教師の仲のために近づけないことに不満を感じていたからこそ、あのような八つ当たりをしているのか。
唯一、学に近づいたときだけ、その不満は満たされるのか。
今の様子や、今まで何千人と恋を叶えてきた私の経験から言えることはそれだけであった。


