「ゼンっていつもそうだよな。」
「何が?」
「お前、いつも休暇が欲しいって願ってるけどよ、本当は仕事が1番やりたいんじゃねぇか」
「何でそう思う」
「前に星集めた時も、今回と同じ事に使ってたからさ」
「…私は自覚ないな」
「ないのかよ」

神社に戻ると、いつの間にか阿修羅がついて来ている。
なにかを片手に赤面している。

「な…なぁ、」
「何だ?」
「アメリカのバレンタインは、男が女にあげるんだろ?」
「そうだけど」

それがどうした?と聞いてみると、阿修羅は細長い箱を取り出す。

「お前、男っぽくて可愛いげねぇからさ…ほら。」

箱の中にあったのは桜が描かれている淵が銀色のかんざし。

「お前にやる。つけろよな。」
「かんざしっていつの時代だって」

そう言うが、強引に手渡され、やるだけやった阿修羅はすぐに自分の国に帰ろうとする。
しかし、その時何か思い出したようにこちらを向いて言う。

「俺が太鼓判押した奴は、たいていその通りだ。」

どういうことだと聞こうとした時、阿修羅は言った。

「お前…絶っ対似合う、可愛いから!」

それだけ言うと、阿修羅はさっさと飛び去って行った。

「な…貴様…おい待て!」

赤くなりながら私は吠える。
しかし、後から鳴り響く鼓動は止まらなかった。

「あの野郎、言うだけ言って行きやがって…」

文句を言いながら鏡の前に立つ。
クソ。
認めたくないが、どうやら、私は阿修羅に可愛いと言われた事に対して喜んでるようだ。


「髪の毛…伸ばすか。」


かんざしが、似合うくらいの長さまで。