恋ノ神



…友紀side…

今日という日を楽しみにしながら、私はあるものを地味な鞄に入れて外に出る。
外にまだ降雪しており、辺りに積もっている。

公園に行って見ると、いつもどうり幸さんがいる。しかし、彼は何故か悲しそうにうつむいていて顔を上げる様子がない。

「幸さん…?」

おそるおそる声をかけると、幸さんはこんなはずじゃなかった、という顔で私を見た。

「顔が暗いよ、幸さん」
「…」

…変だ。

明らかにおかしい。
不安になって肩を叩こうとしたその時、

私の手は、幸さんに触れられなかった。

空気を掻いたかのように、スカスカした感触しかない。

「…え…?」

私は一気に青ざめる。

「幸さん…これ…どういうこと…?」
「…ッ」

幸さんは悔しげに唇を噛み、私に言った。

「俺と初めて会った時、君に『享年25歳』と言ったな。あれはこういう意味なんだ。」
「まさか…」

からかいじゃなかった。
私は残酷な事実を悟る。

「本当に…死んでたんですか?」

幸さんは、そのままコクリとうなづく。

嘘だ…。
幸さんは私のこと撫でてくれたよね?
私が転びそうな時、助けてくれたよね?
幽霊なら、触れないでしょ?

小さな希望に託そうとするが、あることを思い出し、その希望も音を立てて消える。

『櫛灘って〜幽霊に触れるらしいぜ』

いじめられた頃の記憶。
本当だった。
友達とあるスポットに行き、その時、得体も知れないものに触れてしまった時だ。

いじめの原因は、その霊能力らしい。

おばあちゃんの言っていたことは、本当だった。