「あの子の君を想う気持ちが君に伝わって、君もその気持ちに影響され、」
友紀が好きになっていたわけか。
そい聞いてやると、幸はコクコクとうなづく。
「なんだ、もう両想いじゃないか。私の出る幕じゃないのか。」
「そうでもあるが、あなたはその他にもやることを考えていたんじゃないのか?」
やはり、幸は自分の下界にいる時間が短いことを知っている。
私がそれを知ってこの仕事に悩んでいることを、幸は分かっているのかもしれない。
「そうだ。君のこの世界での時間はあと推定約2日だ。それ以上は・・・」
「この世界では生きられない」
「・・・ああ」
そうか、と悲しそうな顔で幸は言う。
「やっぱりな。最近身体が以前より透けてきて、もしかするとと思っていたんだ。」
「嫌じゃないのか?」
「・・・嫌じゃなかったさ。1ヶ月前まではな。あの時友紀に会ってからだ」
そう言うと、幸は何かを堪えているように下を向いて言った。
「死んでいるのに・・・死にたくないと思い始めたのは・・・」
声が小さく、段々弱くなってきている。
「あの子に会えなくなるのは嫌だし、万が一にも、あの子が悲しむような顔・・・」
涙声になっていると分かったのは、無造作に伸びた髪の間から僅かに唇を噛み締めているのが見えてからだ。
「絶対に、見たいとは思わない。」
「どこの恋人同士でも、思うことは同じだ。その気持ちがどれほど強いかは、人それぞれだがな。」


