恋ノ神


とうとう日が暮れ、幸と友紀が別れた後に私は幸の後をついて行く。
すると、幸がいきなりこちらを向くので、思わず一歩引いてしまった。

「何を、付いてきてる。」

やっぱり気付かれてたか。
そう思いながら「やあ」と声をかけた。

「どうやら君は、私に気付いてたみたいだな。」
「そう言う貴女も、人じゃあないみたいだな。」
「何でそう思う?」
「現に宙に浮いてるし、それなのに人目に付かなくて俺には見えるってことが妙でな。」
「ははっ、そう来たか。」

そうだよ、と言いながら幸に歩み寄る。

「そういえば、死んだ人間にも神は見えるんだったな。」
「貴女は誰だ」
「っ。愛染明王。」
「ああ、さっきの神社の神か。」
「そうだ。」

二度うなづきながら言う。

「さっそく願いを叶えに来たと言う事か。」
「ああ、ま、君の願いでは無いがな。」
「友紀の願いだろう。俺は何も願って無いからな。」
「そうだ。よく分かったな。」
「俺と両想いになりたいって言う願いだろ。」
「ナルシストか君は。まぁ、そうだがな。何で分かった?」

聞いてみると、幸は一度目を閉じて言う。

「人の想いっていうのは、時にその相手にまで影響を及ぼすらしい」

―なるほど、そう言いたいのか。