どうするかな。
諦めようかと思うが、あの二人の後ろ姿を見ると、諦める事が出来ない。
特に友紀は今まで一度も幸福を味わっていない。
そんな彼女を見捨てるのは気が引ける。
しばらく考え込んだ結果、あの二人についていく事にした。考えるのは、両想いにしてからにしよう。
二人を街中で追っていると、ふと幸が立ち止まり、こちらを向く。
「どうしたの?」
「いや、なにもない。」
覗くようにして言う友紀に、幸は首を振って言う。
更に街の方へと歩いて行く二人。
友紀は生まれて初めてと言うような笑顔で幸と話している。
ここは少しいじって甘い瞬間にしてやろう。
そう思った私は、念動力で友紀の身体を幸の方へと倒す。
「わっ」
「おっと」
幸はビックリしたらしく、目を丸くしながら友紀を支える。
「大丈夫か」
「ちょっと力抜けたみたいです…」
苦笑して言う友紀は、自分が想い人に支えられていることにやっと気付いた。
照れ屋なのか、友紀は顔をほてらせて立つ。
「す…すいません」
「あ…謝る必要は無いんだが…」
そう言うと、幸は少し唇を歪める。
「ドジっぽい所が可愛いな。」
無造作に友紀の頭を撫でると彼女は嬉しそうに、そして恥ずかしそうな顔になる。
幸も少し照れ顔で友紀を見ていた。
その後も尾行を続けていたが、どう見ても普通の恋人同士にしか見えない。
しかし、彼は自分が幽霊ということを分かっているのか、直に友紀以外に触れるような店には足を踏み入れなかった。


