……………
何て事だ。
私は今までにないくらい大きく溜息を漏らす。
円不 幸という人物が幽霊だという事実に、私は頭を抱えていた。
第一、なぜあの幽霊は人間の目に入ることが出来るのだろうか。それが気になり、私は死んだ人間の情報まで全てかき集めた。
幸の生まれた年と見られる日も調べ上げ、とにかく彼に関する全てを調べた。幸に関しての生涯の記録が入ると、私はそれに目を通す。
幸は40年前、なんとこの神社の近所の家に生まれていた。幸が中学生の時に分かった事だが、彼はIQ140の超天才。高校も大学も国立に入ったという記録がある。
幸はその後科学者になり、内戦の続く国などで核兵器の原子を他の原子と結び付けることで無害な物に変えるという研究を進めていた。
しかし、15年前、あともう一歩という所で、内戦に巻き込まれて死んだらしい。
後の学者が幸が残した技術を生かしたお陰で内戦による被害が減って来ている。
それを見て私は「なるほど」と思った。
偉人の魂は稀に人間の目に入ることが出来る。
歴史に残るほどかは分からないが、一応凄い人物であることは確かだ。
しかも、後で調べてみると、友紀の祖母は巫女だったという事も書いてある。
これなら幽霊に触れる事が出来てもおかしくないだろう。
しかし、偉人と言えど長くは下界に居ることは出来ない。
両想いだとしても、いずれ幸は消えてしまうだろう。


