「…その言い方からすると、相当両親のこと恨んでるな。」

苦笑しながら言う彼は、本当に綺麗で、頼もしさがあると伺えた。

「あのっ…名前、何て言うんですか?」

こんな機会は滅多に無いと思い、名前を聞いてみると、彼は少し考えたような顔をして言う。

「円不 幸」

男で幸という名前は聞いたことが無い。

「いくつなんですか?」
「…享年25歳だ。」

それを聞いて少し驚く。
顔立ちが若いから20 歳にも見えたからだ。
しかし、それ以上に気になることがもう一つ。

幸さんの言った【享年】とう言葉。普通は人が死んだ時、その死んだ当時の人の年齢の事を言う。

ちょっと、からかわれてるだけだよ。きっと。

そう思って済ませていると、幸さんが口を開く。

「君は?」
「あ、櫛灘 友紀です。19歳です」

私がそう言うと、幸さんは「ふぅん」と吐息混じりに呟く。

「同じだ」
「何がですか?」
「君の苗字。櫛灘姫っていう神がいてな、結構容姿のいい女神らしい。それと同じなんだ。」
「私…そんなことは全然詳しくありません…」

申し訳なさそうに言うと、幸さんは気付いたように言う。

「いや、知らないのが一般的だ。申し訳なさそうに言わなくてもいい。」

そう言うと、幸さんはぷっと噴き出して微笑んだ。

「こういう知識、同年代に話したら『マニアックだ』と言われるんだが。」