目の前に立っていたのは20代と思われる男。声には貫禄があり、クールに感じられた。
顔立ちもかなり整っていて、携帯小説に出てきそうな男性。
つい見とれてしまった。

「君、聞こえてるか?」
「は…はぃっ」

こんなことは生まれて初めてと思いながら、ゆっくりと男を見る。

−カッコイイ…

「何してるんだ、こんな時間に。」
「あ、いえ…疲れてたから…」
「疲れてるのか?身体は動くのか?」
「そ、そこまで酷くないので」

あまりの突然さに、私は口調がガタガタになる。
私があまりに様子が変だったからだろうか、男が私の額に手を当てる。

「震えてる、寒気はするか?」
「いっ…いえっ…」

本当に風邪ではない。
そう思っていると、彼が先に言う。

「震えがあると風邪の恐れがあるからな、少し確かめたんだ。」
「ああ、はい…どうも。」

ぼーっとしてしまわないように、私はこっそり自分の手をつねる。

「親が心配してるだろうに」
「…」

そこで私は黙ってしまう。親はもう死んでいるし、生きていても心配などしてくれないだろう。

「親は…いません。」
「え?」

驚いた顔で彼はその場で立ちすくす。

「事故死か?」
「はい、それに関しては私は何とも思わないですけど。」
「…君は、今はどうしてる?」
「一人暮らしです」

きっぱりと言うと、彼は何を考えてるのか分からない顔になる。