あんなにも求めたものが目の前にある。






それでもあなたの名前が思い出せない。
もどかしくて…。苦しくて。
それでも思い出せないの。
覚えているのは…。覚えているのはただひとつ。





真っ直ぐな瞳。






ただひとつの真実。






あなたの名前が思い出せない。
それはきっと私の罪の証。





こんなにも求めたものが目の前にあるのに…。






私を助けた彼は…。
炎の天使…。
私を助けた神父様…。






神父様…。神父様…。






昔の弱い自分がそこにいた。無垢な何もないあの頃。






交わりながら…。あの頃に戻っていた…。






雷が彼を掠めた。






炎の剣はそのまま、真っ直ぐ飛んできた。己を犠牲にして。






ただひとつの真実。
それはわからない。






ただ一瞬…。許しが欲しかった。





名前が思い出せない。






剣を下ろした。






胸には鈍い光しかない。





炎の剣が貫いた。






赤い、赤い…。花びらが散る。






赤い唇はうっすらつりあかる。





「名前は?」






抱き寄せ耳元に囁いた。





赤い花びらが散る。
黒い天使は花びらに変わる…。





青白い雷が走る。






全ての終焉を意味した。
地上と地界を繋ぎ、扉が閉まる。





魔王の叫びが聞こえた。怒りかそれとも悲しみか…。





地上の白い天使の噴水に浮かぶ無数の赤い花びら。






嗅いだことのない香りがした。






拾う白い天使は空を見上げる。





「主よどうかお導きください。」





雷は花びらに…。






何事もなかったように地上の時間は回り出す。