奴はそのまま、彼女の方目に落とした。






「!!!!」






声にならない声がした。それでも彼女を…。






「後は任せる。手を抜くなよ…。アレクセイ…。これは聖務だ。忘れるな。」






バタン…。と乾いた扉の閉まる音。






何故か体は動かない。こちらを向き、ゆっくり方目を開けて見てくる金の瞳。






何も言わずこちらを見つめている。






赤い唇がゆっくり動く…。






「何を迷っているの?神父様?…。」






挑発するようにそう問いかける。






これは聖務だ。わかっている…。彼女は魔女、悪魔だ。わかっている。
だが何かがストップをかける。
魔女が過去に何をしたかも知っている。
俺は…。それでも動けない。






返答しない俺を見て…。薄く笑う。ゆっくり目を閉じた…。






明日…。最後の刑が執行される。
魔女に魂はあるのか?






生きた屍…。奴等は何をしたかも知ってやるのか…。






何も救われない。
聖下…。あの方を全てから守らなければ何も変わらない。






これは、聖下のご意志ではない。






そのまま、塔を出た。






「後悔するわよ…。神父様…。」
誰にも届かない声がした。






******






何かが呼んでる…。懐かしい。






私は…何をしてたんだっけ?
灰色の見習いシスターは一人歩いていた。






段々に声が聞こえてくる。






小走りになるシスター。塔から人が出てきた。






柱の影に隠れ…。誰もいないのを見計らって中に入る。






呼んでる…。上から…。





するすると登る。何重もの結界を抜けて…。






最上階の扉を開けた。鍵はかかっていない…。






引き寄せられたように中に入る。