「あの魔女を教会の象徴にするおつもりですか?!」
蒼い十字架が激しく揺れた。






「教会の強固な権威となる。悪魔に打ち勝った象徴として…。」






赤いローブを被るアゴヒゲの長い教皇に意見する大司教。






「フランチェスコに任せてある…。」






ぎりりと歯噛みする。やつは何をするかわからない。






「君にも命が降るはず、神父アレクセイ…。」






膝まづき十字架を前に握りしめ「御意…。」






きびすを返した。
あの魔女を…。生きる屍に…。狂っている。教皇のご意志ではない。






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声がした。またどこから?






探せない。呼んでる…。





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「あ…。あぁぁ…。あぁぁ。」






塔に響く。叫び声…。
次第に弱くなる。






金の瞳は不敵に聖水を浴びせる神父を睨んだ。






「よかろう…。」
銀の鞭が飛んできた黒い羽根は散る。






どうしてか俺は…。無性に前に飛び出したかった。なのに足が動かない。ただその光景に苛立ちを覚えた。






「誰も…。また救えないのか…。」






ポツリと言葉が出てきた。俺は…。何をしているのだろう。






十字架を握りしめ問いかける。






あれは…。悪魔…。魔女だ…。






なのにこの感情はどこからくるのか…。






呻く声がこだまする。






笑っているのか…。泣いているのか…。それとも…。






俺は…。何をしているんだ?






十字架に問いかける。






神は時に残酷だっ…。






迷う神父に聖水が渡された。






フランチェスコは容赦なく浴びせる。
しゅうしゅう焼け煙が上がる。






魔女は…。回復が早い…。聖水は効果的に体力を奪う。





フランチェスコに投げかえす。