「那祁」


こいつが那祁って名前ね。
那祁は、ニコニコと笑いながらあたし達を待っている。
なんか、あの笑顔、嫌い。


「遅かったね?」

「恵里がな」

「はぁ?」


クスクスと笑いながら茶髪は、隣に止まっていた車のドアを開けた。


「恵里ちゃんはツンデレ?」

「違うわ」

「クスクス……警戒心剥き出しのネコだね」


どうぞ、と促されるけど頑として乗ろうとはしなかった。
このままこいつらの思い通りになってたまるかと岩のように動かないあたしに痺れを切らせた蒼真が背中を押す。


「ちょ、乗せないで!」

「軽く押しただけで、お前軽すぎ」


隣に乗り込みながら蒼真は眉を寄せる。


「関係ない」


短く吐き捨てて、車から降りようとしたけれどさせまいと車が動き出す。