ジキルハイド症候群




「…………全然」


好きじゃなかった。
相手の気持ちもないのに、好きになるわけないじゃん。


「そうか」


あたしの答えを聞いて蒼真は嬉しそうだ。


「もう誰も好きになれないわ」


どこかに置き忘れてきたみたい。


「それは困る」

「どうして」

「恵里が好きだから」

「………どうして」


一体、あたしのどこが好きなの。
あたしと茉里は同じ顔なんだから茉里でもいいんじゃないの?


「初めて会ったときから」

「会ったことがあった?」

「一度だけな」


蒼真は、あたしの頭を撫でる。
その手を払い除けようとは思わなかった。


「それから、ずっとお前だけだ」


そう言う蒼真の瞳は愛しさで一杯だった。
今まで、向けられたことのない眼差しにあたしは、居たたまれなくなる。