ジキルハイド症候群




「理由なんて別にいいじゃん」


別れればいいのよ、と勝手なことを言う田中さんにあたしはため息をついた。


「理由ないのに、別れろなんておかしくない?」

「なに?」

「というか、あたしは蒼真と別れる気なんて一ミリもないわ」


やっと見つけたんだから。


もう、手放したりはしない。


「話はそれだけ?じゃあ終わりね」


帰るからっと踵を返し、歩き出すと、ガシッと手首を掴まれた。肩越しに振り返れば、あたしの手を掴んでいる田中さんと一緒にいた女。名前は、知らない。


「なに…」


か用、と続けようとしたあたしの言葉を遮り、彼女はあたしを体育館の壁に押し付けた。


「っ」


背中を強かぶつけ、痛みに目を閉じる。
息を止めて痛みを遣り過ごした。