「だから、電話出てあげなよ」
「え?」
「さっきから鳴り続いてるから」
指を指され、その先に視線をやると鞄から顔を出している携帯電話が光っていた。
見れば、蒼真からの着信。
「僕は、この時間殆どここにいるから、何時でもおいで」
ニッコリとお兄さんは、車椅子の方向を変えると慣れたように車椅子を動かし始めた。
「あ……あの!」
「ん?」
「お名前、聞いてもいいですか…?」
お兄さんは、軽く目を見開いた後、名前を教えてくれた。
「清水 大和だよ。君は?」
「海江田 恵里です」
「恵里ちゃんね。じゃあ、恵里ちゃんまたね」
ヒラヒラと手を振ってくれた後、大和さんは車椅子を進めながら広場を後にした。
その背中を見送った後、あたしは光続けている携帯電話に視線を下ろす。