ジキルハイド症候群




「………そうなんですか」


涙声で、時々掠れる。
車椅子のお兄さんは、あたしの側で空を見ている。
お兄さんが纏う雰囲気は、穏やかで安心できる。


暫く静かな時間が流れた。
お兄さんは何も言わない。


「…………すみません」


お兄さんの目があたしに向く。
そして、ニッコリと笑った。


「落ち着いた?」

「はい………ハンカチは洗ってお返しします」

「いいよ、あげるから」


ハンカチ沢山持ってるんだ。
そう言って、お兄さんは新たにハンカチを取り出して見せてくれた。


「ほら、ね?」


悪戯っ子のように笑うお兄さんに、あたしも自然と頬が緩む。


「あ、笑った。」

「え?」

「笑った方が良いよ」


不思議な力を持つお兄さんだな、と思った。