「直感ですか?」


「そうそう、直感って案外馬鹿にできないよ。数ある音楽の中でこれに惹かれたってことは、今がその時ってことなんだよ。十九歳である今しか表現できないものが、その音楽にはあるんじゃない?」


十九歳の今しか表現できないもの。


その言葉が妙に脳裏に響いた。


二十歳手前、大人になる一歩手前の今でしか表現できないもの。


十九歳の俺が表現したいもの……。


「時間はたっぷりあるんだ。ゆっくり考えればいいさ」


ポンッと頭を撫でられると、大塚さんは背伸びをしながら立ち上がる。


練習を再開だと呟いてリンクに向かう大塚さんの後を急いで追う。


「あの、ありがとうございます。少し楽になりました」


「いいってことよ」


「それと、もう一つだけ相談したいことがあるんですが大丈夫ですか?」