「…おい、何する…っ」
「……明加」
「は?…お前、それはもういいって──」
呆れ顔で振り返ろうとした、俺の視界に、緑が舞った。
ぽん、ぽん、ぽーん。
ボールが弾んでいく先と、
友人が指差した先。
…なんで。
「………アカリ」
肩を揺らして。
息を弾ませて。
本物のアカリが、そこにいた。
「…ヒロイチ」
驚いた表情を隠さずに、アカリが目を見開いて俺の名を呼ぶ。
俺はただ、本当にただ動けなくて。頭の回転が止まったみたいに、突っ立ってることしかできなくて。
「昨日…連絡、もらってね」
お祭り、クラスの男女何人かでいかないかって。アカリの唇が、言葉をつむぐ。
想像していたより、ずっと優しい音で。
「慌てて帰ってきちゃった」
「………」
「もしかしたら、ヒロイチも来るんじゃないかって、思って」
アカリの顔が、少し赤らんだ顔が。
俺に向かって、ほころぶ。
「…久しぶり、ヒロイチ」
「……っ、」
声にならない空気が、喉を締めた。
苦しい。切ない。会いたいと。
俺が今日、いるはずのないアカリを捜してしまったように、
アカリだったらと、浴衣の色を思い浮かべてしまったように、
アカリはどうしているかと、テレビをぼうっと見ながら考えたように、
もし。もし、アカリも同じように、夏休みにぐるぐると脳みそを悩ませていた俺と同じように、俺に会いたいと思ってくれていたとしたら。
一瞬でも、顔を見たいなと思ってくれていたとしたら……俺は。



