「あっ、これ、私の。そっかぁここに忘れてたんだ!わざわざ持っててくれたの?ありがとうです」

そう言って彼女は頭を下げた。

手渡すとき彼女の柔らかな右手と触れ合った。

その感触にドキドキしながら言葉を続けた。

「随分使い込んだライターですね」

「あんまし物持ち良いほうじゃ無いけど、これだけは何故だか捨てれなくてね。あっそうだ、お礼にジュースどうです?」

そう言って120円分のコインを自販機に入れ自販機に向かって右手を差し出した。

少し逡巡した自分を促すように満面の笑顔で彼女は頷いた。


頭を下げコーヒーのボタンを押してコーヒーを取り出しお礼を言って、その場から離れた。


それが彼女と話した最初の会話だった。