中古で買ったダイニングテーブルの椅子に座ると、料理しているお母さんの腕が当たったり、椅子をテーブルの奥にちゃんと引っ込めておかないと冷蔵庫の扉も開けられなかったり、テレビがあるリビングまでカニ歩きで移動しなければいけない。
動線やスペースというものが確保されておらず、窮屈な生活を強いられている。
それでも居心地の良さを感じるのはなぜだろう?
築三十六年の貸家とおれの行動が、完全にシンクロしてしまっている気がする。
父親の唯一の趣味であるゴルフ雑誌が、新聞ラックからはみ出しているくらいで小奇麗ではある。
壁には一枚だけ絵が飾られているが、おれが小学生のときに水性の絵の具で描いたもので家族以外の人に希少価値はない。



