目を開けるのが怖かったが、思い切って瞼を上げてみる。
視界は真っ黒。
ということは、おれはまだ倉吉家別宅の火事の真っ只中で、生きていることになる。
倉吉の父親殺しの可能性も残る。
おれの左頬は正体不明の人物の背中に密着しているが、頭を持ち上げて確かめる力がない。
運ばれている途中、黒こげの衣装をまとった人間の焼死体を見た。
頭部が炭化して空洞の目から黄ばんだドロッとした液体が流れている。
気味の悪い涙を流す死体を目の当たりにして顔を背けたかったが、目を瞑るのが精一杯。
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