コイツ計算してるのか?と薄々わかってしまう“お願い”の仕種に抵抗できるほど、おれは硬派じゃない。 「わかった。これからはゼロって呼ぶよ」と言ったときの自分の笑顔がいやらしくなっていないことをただひたすら祈る。 おれたち二人は学校の正門から真っ直ぐ坂を下りたところにある駅前まで歩いた。 距離にして400メートル。 広々とした一戸建てが並ぶ住宅街。 ゼロは突然足を止めた。 うっとりとなにかに見惚れている。 視線の先は、手入れが行き届いた色とりどりの花を咲き誇らせている家の玄関前の庭。