一か八かジャンプして、支店長室の抜け道になっている四角い穴にしがみ付き、よじ登ろうと手を伸ばしたがまったく届かない。


 まだ煙のない低い位置に伏せ、金庫室の奥の方へ這っていくしか、死へのカウントダウンを延ばす方法が思いつかない。


「NBAの選手だと助かったかもね」

 倉吉の上品な笑いの猿芝居は継続されていた。


 おれの必死な姿が、倉吉の眼には面白おかしく映っているようだ。


 こんな悔しい思いをして死んでいくのか?


 おれの魂は浄化されることなく、この世で彷徨い続けるだろう。