「さぁ、早く田中君を火あぶりの刑にしてあげて」

 倉吉が興奮気味に指示を出し、 ゼロは一歩前に出て鉄格子の間に腕を通す。


 マッチ棒の炎が揺れ、早く落としてくれと余計な催促をする。


「や、やめるんだ、ゼロ」

 おれはゼロを信じていた。


 土壇場で倉吉を裏切ってくれると思っていた。


 しかし、その希望の光は、マッチの火とは対照的にいまにも消えそうだ。


 無人島で溺れるゼロを見捨てた夢を見たが、現実の世界で見捨てられたのはおれの方。


「好きな彼女に止めを刺されて死ねるなんて幸せね」

 そう言ったあと、倉吉は命の尊さなどまったく感じさせない軽いノリでケラケラ笑う。