「田中君、絵を描く授業のとき、私のお父さんから島を描いてくださいと言われたことない？きっと覚えてないわね。私、休み時間に５年２組の教室を訪ねたことがあったんだけど、教室の後ろにクラス全員の絵が飾ってあって、田中君は無人島で一人寂しく暮らす絵だった。見てたら強い風が吹いてきて画鋲が外れて絵が捲れたの」
倉吉は居間に飾ってある絵のことを言っている。
「そうしたら男の人が目や鼻や口から血を流して倒れている絵が裏側に描いてあった。顔の雰囲気から私の父さんに似ているような気がしたわ。絵はお父さんが死ぬ前に描いたものだから、田中君は私を助けるためだけにお父さんを屋上から突き落としたんじゃないということになるわね」
「おれにはおまえのお父さんを殺す明確な動機があったと言いたいのか？」
