「どうして?」と、ゼロが鉄格子にしがみ付いて訊く。 「してないものはしてないんだよ」 「私は罪を憎むけど、田中君を憎みたくないの」 おれはゼロの顔をまともに見られず、顔を背ける。 「証拠とは言えないかもしれないけど、田中君が私のお父さんを恨んでいたこと、私、知ってたのよ」 倉吉がまたしても口を挟んできた。 「おまえはもう喋るな」 おれが睨んでも倉吉は構わず喋り続ける。