「おれは駅前のバスターミナルまで行くけど、零さんはどっちの方向?」
いきなり下の名前で呼んだのは、蜜姫という珍しい名字を周りに聞かれるとあまり良い気がしないのではとの配慮。
「私の零(れい)という名前ね、ゼロって読み方が正しの」
「ゼロ?!」
人の名前とは思えない響きに耳を疑う。
「みんな間違うから気にしなくていいよ」
「先生が出席簿で呼んだとき、言えばよかったのに……」
名前のことで傷つけそうで言葉が小さくなった。
「レイの方が女の子っぽいから無理に訂正させる必要ないかなと思ったの」
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