「おまえのおれに対する憎しみはこれで晴れたか?」
おれは大袈裟に両手を広げて閉じ込められていることを再認識させる。
「まさか……あのね、田中君。高校に入学する前、お母さんが“お父さんは子供しか愛さなかった”とポツリともらしたの。そして一冊のアルバムを私に渡したわ。それには私だけしか写っていなかった。旅行のときの写真は私とお母さんをツーショットで写していたと思ったけど、全部お母さんの顔が見切れていた。あぁ~私はお父さんに愛されていたんだとうれしくなったわ。そう想うと急に田中君が憎くなったの」
おれの問いに答えたあと、倉吉はすっきりした顔でニコリと笑う。
三船先生の歪んだ愛は娘にしっかりと受け継がれたみたいだ。



