“幼いときの記憶って何才まで覚えてる?”とか“なぁ、小学校のときの記憶ってちゃんと覚えてるか?”とか常識的なことを気軽に尋ねる親友がいままでおれにいなかったのは、自分の過去をほったらかしにした原因かもしれない。
「田中君、私はね、田中君のことが好きだったの。特にサッカーをしている姿はカッコ良かった。そして、命まで助けてくれて感謝してるのよ。好きにならないほうがおかしいでしょ?」
倉吉は目を細めて訊く。
「好きにならないほうがおかしいだって?殺そうとして、しかもおれを閉じ込めておきながらよく言うぜ」
「田中君、愛と憎しみは紙一重なのよ」
当たり前のこと、とでも言いたげに倉吉は説教をたれる。



