「現実は受け入れるべきよ」
絵日記を破ったことで、悔しがると思ったが、倉吉は澄まし顔。
「おまえは、頭で思い描いた空想の中で都合の良い世界を創っているんだ」
「田中君は小学校5年生くらいの記憶が曖昧なんでしょ?きっとインフルエンザ脳症を治療するときに使った抗ウィルス剤の点滴の副作用か、後遺症が原因だと思う。声がハスキーなのも病気のせいなのかもしれないわね」
「医者でもないくせに、決め付けるな!」
怒鳴ってはみたが、倉吉の推理はおれの心臓を深くえぐった。
幼いときの記憶に空白の隙間ができるのは、脳の構造上しかたのないことだと思っていた。



