おれが刺されたあと、ゼロは無事でいられるのだろうか? 死を覚悟したおれの脳は合理的なことが微塵も浮かんでこない。 親にぶたれる前の子供のみたいに力強く目を閉じた。が、おれの左脇の隙間に何かが通過するような感触が伝わったあと、「グワァ……」という猛獣がもたらす声がした。 倉吉を見ると鬼の形相でこっちを睨み、右脇腹に刺さっている日傘の先を掴んでいる。 日傘のハンドル部分を持って突いたのはゼロ。 しかも傷を負った右腕を使って刺した。 「大丈夫か?」と声をかけると、ゼロは力なく微笑む。