「嘘つけ!おれはそんなこと言ってないぞ!」
「言ったわよ。いままで私のこと忘れていたくせに!」
確かにトモちゃんの存在をすっかり忘れていたおれに否定する権利はないのかもしれないが、引き下がるわけにもいかない。
「おれはおまえに“田中君の声ってオヤジくさいね”と言われたのが切っ掛けで魚を食べるどころか見ることもできなくなったんだぞ」
「私はそんなこと言った覚えはないわ。話をすり替えないで」
倉吉はシールでも剥がすみたいに果物ナイフの刃から握っていた指を一本ずつ離し、改めて柄のほうを掴む。
その光景を見てゼロが「ヒッ……」という短い悲鳴をもらす。



