いまなら……。
おれは手が震えないように“落ち着け”と何度も念じながら小指の第二関節を絡ませる。
「嘘ついたら針千本飲~ます」
誓いの言葉はさらにおれの顔を真っ赤にさせる。
「針千本は海で泳いでいるハリセンボンじゃないよ」と言ったあと、蜜姫零は「キャハ」と声を上げて笑う。
今度は完全に注目を集めたなと諦めながらクラスメイトを見ると、不思議なことにまたしても無反応。
「ねぇ、ねぇ田中君って……」
蜜姫零はおれの隣の席に座ると、「どこの中学だったの?」とか「趣味は?」とかたわいもない質問を矢継ぎ早に飛ばしてきた。



