視覚で人の姿は捉えられなかったが、二人の話し声が聞こえてきた。 「私をどうするつもり?」 「田中君を釣り上げる貴重なエサになってもらうわ」 「もう、十分じゃない」 「何言ってるの?これからよ」 ゼロの声は怯えていて、傲慢な言い方は倉吉の方だ。 声は金庫室から聞こえ、二人は大きなハンドル付きの扉の陰に隠れているらしく、どんな状況で会話しているのかわからない。 緑色のカーペットに足を伸ばしたところで踏みとどまる。